緊急声明文：「仁鮒小学校について」

 緊急声明文　「旧仁鮒小学校について」

　

（Youtubeリンク）https://youtu.be/uq4blFoSluo

声明文（全文）

2024年5月21日

声明文

一般社団法人白神山地アートミュージアム

　能代市二ツ井町は、日本三大美林のひとつ、天然秋田杉の産地でした。地域の小学校はすべて、樹齢約350年もの天然秋田杉で建っており、それぞれの地域のおとなたちが、子らを思い、すべて手づくりで建てました。

   いま、天然秋田杉は伐採できず、わずかに残された天然秋田杉林は、秋田県の天然記念物として保護されています。

   2007年以来、能代市二ツ井町の小学校は次々と廃校となり、すでに4校の天然秋田杉校舎が壊されました。最後の一校となった天然秋田杉校舎•仁鮒小学校は現在、「危険だから解体」と能代市は主張しています。しかし、市は「危険」とする根拠を示していません。そのため、私たちは5月14日、根拠の開示に対する要求を含む住民監査請求を行ったところです。

　天然秋田杉産地を担ってきた方々の思いを受けて、地元住民と共に校舎保存のために尽力してきた、写真家の江川正幸さんの活動を継ぐ白神山地アートミュージアムでは、独自に、岩手県一関市内にある5つの木造校舎の耐震診断や愛媛県八幡浜（やわたはま）市立日土（ひづち）小学校の保存・再生のための構造設計を手がけた腰原幹雄（こしはらみきお）東京大学教授ら、木造耐震診断の専門家による調査を依頼しました。

　ところが、調査団が、校舎立ち入りを教育委員会に申請したところ許可が下りませんでした。

　すでに10年前に、「天然秋田杉づくりの仁鮒小学校は、日本の文化遺産としての価値がある」とする専門家の見解があり、その後も複数の専門家の賛同がある中で、十分な検討、調査を行うことなく解体するのは、大きな文化的喪失です。

　この見解をもとに、住民が住民監査請求を能代市に出したところ、能代市教育委員会の同意を得て預かり使用していた仁鮒小学校体育館の鍵を、教育委員会が持ち去りました。

   2024年4月20日は、仁鮒小学校の創立147年目のお祝い日でした。翌21日に開いたお祝い会では、仁鮒小学校体育館の見学会を開き、たくさんのお祝いメッセージを貼り、100人を越える見学者がお祝いしてくださいました。

    仁鮒の集会所で開いた校舎活用についての話し合いも、秋田工業高等専門学校教授の井上誠さんの提案や、白神山地アートミュージアムの提案、地元住民から初めて仁鮒を訪れた方まで、意見を出し合いました。

　5月25日には、東京から音楽家の青木慶則（よしのり）さんが仁鮒に来てくださり、日本初の童謡「かなりや」や「浜辺の歌」を作曲した、仁鮒小学校卒業生の成田為三の唄を共にうたおうという音楽会を開きます。

　能代市から鍵を借り、見事な天井トラス構造で、音響効果抜群の仁鮒小学校体育館で開き、創立147年を祝うお祝いのメッセージや、住民が自らの手で建てた天然秋田杉の体育館の素晴らしさをご覧いただきたいと思います。

　仁鮒校舎内に展示している成田為三の資料や、歴代の卒業写真アルバム、地元の樹木や民芸や地域の歴史に関する展示も、青木さんやご参加の皆さんと共に見ることで、天然秋田杉に支えられた木都能代の歴史や培われてきた文化に、参加者の方々と思いをはせたいと思います。

     さらに、6月1日には、日本を代表する木造建築の第一人者であり、「天然秋田杉づくりの仁鮒小学校は、日本の文化遺産としての価値がある」と評価してくださった安藤邦廣•筑波大学名誉教授、大橋好光（よしみつ）東京都市大学名誉教授、前述の腰原幹雄・東京大学教授、中村琢巳（たくみ）東北工業大学准教授を招き、仁鮒小学校の価値と改修について話していただきます。

　こちらも仁鮒小学校体育館で開催し、参加者と共に校舎見学をし、専門家の方々はあらためて、校舎と体育館についての総合的な見解を、具体的に提言していただこうと思います。

　8000年のブナ原生林、水源の森•白神山地を、絶滅危惧種のクマゲラの写真と映像を国内外に発信し、大規模林道建設による皆伐から守った生命誌写真家の江川正幸さんは、白神山地とその恵みで生きる天然秋田杉林、里の天然秋田杉校舎•仁鮒小学校と体育館、住民と共に能代市の伐採から守った「古木三本桜」と校舎まわりの樹木は一体で、唯一無二のいのちのつながりであることを、私たちに伝えてくれました。

　上記の考えに基づき、江川さんの活動を継ぐ、私たち、一般社団法人白神山地アートミュージアムは、5月25日と6月1日の会を仁鮒小学校体育館で開き、校舎の掃除と見学ができるように、能代市教育委員会に要望を続けます。」

公開日：2024年5月21日